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コラム

グァテマラよもやま話 その17 マーブルチョコ


2021.06.04コラム


隊員は、基本的にはなるべく現地の生活に順応するよう、食事や生活スタイルを現地に寄せるようにしていました。

そうは言っても、隊員も生身の人間ですから、日本食が恋しくなります。しかし、当時のグァテマラには日本食レストランはありませんでした。華僑の食材店で日本の食材がたまに売られている程度でしたが、そんなに魅力的なものはありません。

それで、隊員は日本の家族から食品を小包で送ってもらっていました。

しかし、手紙すら届くことがままならない国ですから、小包が無事に届く保証はありません。届いたとしても、密輸防止か何かの名目で、梱包を解いて中身を物色されていることが大半です。そして、物色されたうえで、何らかの品がなくなっています。担当者の興味を引いたのでしょう。

そうやって勝手に物を取られないように、梅干しなど、彼らが嫌いそうな物品を魔除け代わりに(ドラキュラにニンニクみたいな発想で)入れたりしますが、それでも何かしら取られます。

 

あるとき、実家から小包が届きました。日本語で書かれた内容物のリストが同封されています。このリストは、私が親に要請したもので、何か取られていないか確認するためです。

リストを見ると、私が頼んだもの以外にも、いろいろな食べ物が書いてあります。親が気を遣ってたくさん送ってくれていました。腐らない物ということで、お菓子が多かったです。リストと中身を照らし合わせていると、黄色のマーブルチョコが一粒、転がり出てきました。おやおや、ウチの親はマーブルチョコを食べながら荷物を梱包したのかな、と微笑ましく思っていると、リストに「マーブルチョコ」の記載があります。

なんてことはない、グァテマラ人が荷物を漁りながらマーブルチョコをつまみ食いしていたのでした。

それはそれで微笑ましく、他に取られた物品がなかったこともあり、私にとっては愉快なエピソードになりました。

 

私は普段お菓子を食べないので、そのとき送ってもらったお菓子の大半は、他の隊員(とくに女性隊員)へのプレゼントになりました。みんなものすごく喜んでくれたのが印象的です。そんなに喜んでもらえると、こっちの方が嬉しいよ、と思いつつ、その場に居合わせなかった女性隊員が気の毒になりました。

みんなそうやって、日本からの施し物を分かち合っていたのですが、送別会などに合わせて、お互いの手持ちの品のオークションをすることもありました。自分はそんなに欲しくなくても、他の人が欲しいのであれば、買った人は喜ぶし、売った人も小銭が稼げて、ウィンウィンですね。

 

一度、たまたま日本から訪問していた隊員のご家族が、いろいろ差入を持ってきてくれていて、そのうちの缶コーヒーがオークションにかかりました。ごく普通の、1缶100円ぐらいの缶コーヒーです。

その缶コーヒーが、その場にいた多くの隊員のハートに火を付けました。オークション開始と同時に、あちこちから参加する声が飛び交い、あっという間に値段が跳ね上がります。最終的には1缶1000円ぐらいで落札されました。ご家族は、こんなことならもっと持って来ればよかった、と非常に申し訳なさそうなご様子。何気なく取り出した缶コーヒーに、貧乏な隊員たちがあんなに殺気立って群がったのですから、無理もありません。

もちろんご家族に非はありません。コーヒーの輸出で有名な国の隊員が、あんなに日本の缶コーヒーに飢えているなんて、想像しようがありませんから。隊員自身も、普段日本の缶コーヒーが飲みたいなんて考えていなかったでしょう。それが、目にした途端、心の奥底にしまい込まれていた欲望が燃え上がったのですから、食べ物って不思議です。

 

続く

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