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コラム

グァテマラよもやま話 その25 ラグナラチュア


2021.09.08コラム


バハベラパス県の北に接するアルタベラパス県に、ラグナラチュアという湖があります。

アルタベラパスはかなり大きな県で、南側は山岳地帯、北側は熱帯雨林地帯になっています。ラグナラチュアのある辺りは熱帯雨林地帯で、西はキチェ県境、北はメキシコ国境が近く、すごい辺境です。

 

ラグナラチュアは、とにかく遠いうえ、途中の道は雨季にはドロドロの沼地になってしまい、四駆の車だと車両が重くて沈んでしまう、軽くて馬力のある二駆の車でしか行けない、にっちもさっちもいかなくなったら重機で引っ張ってもらうしかない、バイクでなら行けるかもしれないよ、という噂の秘境でした。また、湖底から温泉が湧いていて水温が高く、巨大な淡水魚が棲息している、という噂も。非常に冒険心をくすぐられる場所でした。

政治的にも、内戦が激しかった頃、政府軍が反政府勢力(とレッテルを貼った人々)をラグナラチュア周辺の施設に拉致し殺害していた、という噂があり、とにかくミステリアス。

 

これは一目見ずにはいられない。ということで、仲間を募って遠征しました。アルタベラパスの県都コバンに集合し、意気揚々と出発しました。

しかし、アルテベラパス県内の山道は、地図を見て想像していた以上に険しく、長い!また、途中に町などほとんどなく、飲み物を買うこともできません。我々は、焼けつく陽射しに晒され、喉をカラカラにさせながら、これホントにたどり着けるのかな、と若干の不安を抱えつつ、ひたすら前進していきました。そんな山道で、茂みの中からカミオネタがひょっこり現れてすれ違ったときは、心底驚いて、なんでこんなところにカミオネタがいるの?疲れて幻でも見ているのかな?と思ったほどでした。

 

山道を抜けて標高が下がると、風景は熱帯雨林っぽくなり、暑さと乾きが増していきます。例のドロドロ沼道、いつ現れるだろう、そろそろかな、と戦々恐々としながらさらに進んでいきます。しかし、目にするのは、普段バハベラパスで通る道よりよっぽど広くてきれいな、走りやすい道です。まだまだ遠いのかな、疲れたな、と思っていると、なんと、ラグナラチュアに到着してしまいました。どうやら、直前に道路が補修されていたようです。いやーラッキー。グァテマラのスコールは非常に激しく、道路は補修してもすぐ豪雨でぐちゃぐちゃになってしまいます。本当にタイミングが良かった!

 

ラグナラチュアの村は、特徴のない小さな村でした。しかし、当時はまだ内戦が終了しておらず、かつ、大量虐殺の噂のある場所ですので、国連の平和維持軍が駐留しており、水色に国連マークの入ったベレー帽を被って迷彩服を着た兵士がそこかしこに歩いていました。私はこのとき初めて、グァテマラがまだ内戦中であることを実感しました。

 

兵士を見ると、さすがに緊張が走ります。職務質問とかされないかな、とびくびくします。とはいえ、せっかく来たんだから写真は撮りたいです。そこで、たまたま目の前を通りかかった兵士に、すいません、写真撮っていいですか、とストレートに聞いてみました。すると、あっさりOK!しかも、超笑顔でポーズを取ってくれます。彼はインドネシア軍から派遣されているとのことでした。熱帯の暑さに慣れているからなのでしょうか。大変ですね。

本当は、任務の内容などいろいろ聞きたかったのですが、さずがにまずいかと思い、聞けませんでした。彼らの活動が意味のあるものになるよう、願わずにはいられませんでした。

 

そして、幻の湖、ラグナラチュア!なんとなく水温が高いように感じますが、熱帯の湖ですから、そんなものかもしれません。一生懸命目を凝らして、巨大魚を追い求めましたが、残念ながら見つけることはできませんでした。せっかく来たんだし泳ごうかな、とも思ったのですが、何が潜んでいるかわからん、でかいワニとかに食われたらたまらんわ、と思ってやめておきました。

 

帰り道は、勝手がわかっているので、行きよりは短く感じましたが、そうは言ってもサラマまで片道150キロ以上はあります。行きの疲労も蓄積されています。最後の方は腰やら肩やら痛くなり、意識朦朧としていました。

 

山岳地帯に入り、コバンに向かう山道の途中、まっすぐな坂道を上ってとある小さい峠を越えました。その瞬間、道の左側の切り立った崖の向こう、見たことのない変わった風景が目に飛び込んできました。食器洗い用のスポンジのボコボコした側を上にしたような形で、小さな緑の丘がたくさん密集して連なっているのです。見たのはほんの一瞬だったはずですが、その一瞬は長く感じました。私は心を奪われ、どうやってその峠を下って来られたのか、どうして崖から転落せずに済んだのか、まったく記憶にないです。後から仲間にその風景を見たか聞いたのですが、2名とも見ていないとのことでした。本当にあった風景なのか、今でもはっきりしないのですが、風景自体は、今こうして書いている瞬間でも、まざまざと脳裏に蘇ってきます。不思議な体験でした。

 

 

続く

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