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コラム

グァテマラよもやま話 その7 活動内容


2021.03.19コラム


実際に現地で何をしていたのか、お話しします。

 

私は、とくにやることが決まっていなかったので、現地に入ってから数カ月間、援助機関に同行したり、他の隊員の活動を見せてもらったりして、どんなニーズがあるか、何が出来そうか、調べていました。そして、紆余曲折を経て、民芸品の生産グループの支援に携わることになりました。具体的には、伝統的な手織物の販売、加工用機械・原材料の購入原資の調達、生産管理です。

 

マヤ地域の多くの女性は、その地域独自の柄を織り込んだウィピルというブラウスを着て、コルテという巻きスカートを履いています。既婚者は頭に飾りを付けたりします。男性の民族衣装は、襟や袖に柄を刺繍したシャツ、裾に柄を刺繍したズボン、装飾付きの帽子といった感じですが、残念ながらすでにごく一部の地域でしか見ることができません。

私のいた地域のウィピルの生地は、整経された木綿製の経糸を、座った状態のまま腰ベルトで引っ張って織り進める、完全手作業の原始的な方法で作っていました。柄は、緯糸を通すときに一緒に柄用の糸を織り込んでいます。なので、柄の完成形がわかっていないと織れません。柄は、基本的な文様がいくつかあり、その組み合わせや配色は、織り手が自由に決めます。

 

標高の高い地域では、寒いので、撚る糸の本数を多くした太い糸を使って生地を厚くしたり、柄の糸に羊毛を使用し、表面に出ない部分を生地の裏側にわざと出してパイル地っぽくしたりします(通常は柄の糸は裏側に出ないよう緯糸に織り込みます)。逆に、標高の低い地域では、暑いので、木綿のウィピルではなく、ウィピルっぽい柄を入れ込んだ化繊のブラウスを着ているところが多いです。

 

ウィピル以外でも、トルティーヤを包んで保温するためなどに、手織りの布を使います。

女の子は、3歳ぐらいから糸撚りなど準備作業の手伝いを始め、6歳ころから簡単な布を織り始め、10歳ころにはウィピルを織り始めます。手先の器用な子であれば、15歳ころにはすでに一人前の織り手として認知され、他の女性から自分用のウィピルの制作を頼まれることもあるようです。

 

ウィピル以外の布は、比較的幅が狭くて織りやすいのですが、ウィピル用の布は幅を広く織るため、かなりの技術と力が必要で、時間もかかります。柄の量や複雑さ、機織りにかけられる時間量などにもよりますが、私の地域のウィピルは、一着作るのに半年程度かかるそうです。一枚の布として織り終えた後、両端を折りたたんで頭の部分を切り抜いて、腕を通す部分を残して両脇を縫い合わせ、襟ぐりと袖を刺繍で補強して完成です。

 

コルテは、足踏み式の機織り機(鶴の恩返しのイメージ)で織った布地を、腰回りにぐるぐる巻いて、腰紐で縛って着ます。暗めの色の生地に同系統の色の柄をあしらったおとなしいものもあれば、赤や黄色のストライプに柄もつけた派手目のものもありますが、ウィピルほどバリエーションはないです。機織り機がないと作れないので、購入することがほとんどです。地域のものというより、自分のウィピルに合う好みのものを選んでいるようです。コルテはマストアイテムで、上はTシャツでも下はコルテ、というマヤ女性が多いです。

 

ウィピル用の手織りの布は、作るのに時間がかかるし、生地として柔らかくて加工がしにくいので、サイズを小さく作ってランチョンマットやコースターなどにしたり、小銭入れなどの柄の一部に使ったりします。コルテの布は、比較的加工がしやすいので、シャツやバッグの材料にしたりします。

 

もちろん、私自身は、派遣前に手織物の勉強も仕事もしたことがありません。役割としては、日本大使館などから小規模の援助金を受けて、布を織る糸をある程度のロットで購入して在庫管理したり、加工するための工業用ミシンを購入したり、というものです。

マヤの女性たちは、家事育児や畑仕事や出稼ぎのため、小学校も卒業していない人が多いです。なので、みなさん手織物は作れますが、文字を書いたり、少し大きな桁の計算をしたりすることは、割と苦手です。私は、援助対象の各村で、それぞれリーダーを決めてもらい、在庫管理などのため、簡単な算数を教えたりもしていました。

 

また、各商品の仕上がりサイズが不揃いだと、業者に買い取ってもらえないのですが、そもそもフリーハンドで作っているのでサイズがバラバラになりがちです。また、織り終わった後何回か洗って色落ちさせきる(変な糸に当たるとものすごく色落ちします)のですが、その際どうしても縮みます。そして、織った日の気分や力加減で、布の目の詰まり方が違うので、同じ物でも縮み具合が違ってきます。

 

最初の頃は、村に完成品を取りに行って不揃いだと、やり直してもらうよう伝えていました。ですが、もともと自分たちで使うために布を織っていた人に、半ダースとか1ダースとか同じサイズで織れ、と言って納得してもらえないのも無理からぬ話です。何回も話をしたり、縮みを想定して大きめに作った型紙を配ったりしているうちに、どうにか理解してもらえ、サイズの揃った商品が仕上がるようになりました。

 

多めの発注があると、納期に間に合わせるため、何人かの織り手で手分けしてもらいたくなります。しかし、全員が同じように織れるものではなく、上手な人、そうでもない人、早い人、遅い人、まちまちで、かえってやり直しの手間がかかるおそれもあります。それに、著作権的な発想なのか、このデザインは自分のオリジナルだから自分だけで作りたい、このデザインは人のオリジナルだから自分が作るのは気が引ける、という感覚があります。

 

ですので、一人に頑張って織ってもらうしかないこともあり、ちょくちょく村を訪問して仕事の進み具合を見たりしていました。

 

続く

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