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海外の旅

海外の旅の話 その29 カカオ?ココア?


2023.08.25海外の旅


アクラで楽しい時間を過ごしたのち、本来の目的地である、同期の旦那さんの任地の村に向かいました。村の名前は忘れてしまいましたが、アクラから見て北東、隣国トーゴ寄りにありました。まずはアクラのバスターミナルに行き、目的地方面に向かう乗り合いバスを探します。目的地はそれほど遠くなく、無事に村に辿り着きました。

 

村に着くと、同期の旦那さんの知り合いを訪ねます。訪ね方は、出会った村人に名前を伝えて、家まで案内してもらう、というシンプルなものです。とくに苦労することなく、尋ね人は見つかりました。見知らぬ日本人がいきなり訪ねてきたわけですから、何事かと訝しんだと思います。しかし、元隊員の名前を出して、彼の友人だと伝えて、日本から持参した写真を手渡すと、非常に喜び、歓迎してくれました。そしてそのままそのお宅で、数日間滞在させていただきました。

 

村での滞在中、私はとくに何かしたわけではなく、あちこちぶらぶらしながら、なんとなく過ごしました。ただ、何もしないのも良くないので、食事を作るのは手伝いました。ガーナの主食は、フーフーと言います。フーフーは、キャッサバやヤムイモといったイモ類を臼で搗いて練ったもので、作り方といい、見た目や舌触りといい、日本のお餅に似ています。ただ、味はやや酸っぱいです。似たもので、トウモロコシやキャッサバを発酵させた生地で作るバンクーがあります。フーフーもバンクーも、トマトスープなどに付けて食べます。

 

フーフーやバンクーを搗く杵は、日本の杵とは違って、柄がありません。太い棒を両手で掴んで持ち上げ、ひたすら突き下ろす、という形で搗いていきます。現地の人がやるのを見ると簡単そうなのですが、実際にやってみると、なかなかきれいに出来ません。そこは日本の餅つきと同じです。

 

フーフーやバンクーの一人前はかなり量があります。一方、スープはそんなに辛くないし味も濃くないので、フーフーやバンクーが余り気味になります。それだけで食べると酸っぱさが気になるので、スープとうまくバランスを取るのに少々苦労しました。

 

村は田舎でしたが、電気は通っていました。のちにガーナ各地を巡って気付いたのですが、ガーナはわりと田舎でも電気はありました。しかも、冷蔵庫はかなり効いていて、ビールを頼むと、キンキンに冷えたものが出てきました。一般的に、旧フランス領は食べ物が美味しく、旧イギリス領はビールが美味しい、と聞いていたのですが、旧イギリス領であるガーナで飲んだビールは、たしかに美味しかったです。国産のものもあれば、南アフリカ産のものもありましたが、いずれも薄すぎず濃すぎず、飲みやすかったです。とくに日中は暑いので、キンキンのビールを飲むだけで、他には何も要らない、という気分になりました。

 

ある日、村人のお葬式がありました。興味があったので見に行くと、各々カラフルな衣装を身にまとった女性たちが、歌ったり何か唱えたりしながら、輪になって回っています。音楽は、激しくもなく、悲しげでもなく、なんというか、淡々としています。伴奏の楽器隊の編成もまばらな感じです。ご本人は、村以外のどこかで亡くなり、お葬式のために村まで運ばれてきて、しばらく安置されたあと、お葬式を迎えたそうです。暑いのにご遺体が傷まないのは、何か処置を施しているからでしょうか。最後は大勢の人が列をなして、埋葬場所まで連れて行きました。

 

ガーナと言えばチョコレート、チョコレートと言えばカカオですが、この村でカカオの実を初めて見ました。カカオの実は、木の枝や幹に成っていて、アメフトのボールを一回り小さくしたようなサイズでした。

 

私は昔から、原材料のことはカカオ豆と言うのに、加工品のことはココアパウダーと言っているように、使い分けの基準がはっきりせず、気になっていました。それで、村人に、カカオの実を指差して、これは何と言うのか、聞いてみました。彼の答えはこうでした。

 

「ククウォ」

 

これを聞いて、私は目からうろこが落ちたような気になりました。

私の耳には、「ククウォ」は、「カカオ」と「ココア」の中間で、どちらにも聞こえるものでした。ということは、「カカオ」と聞こえた人はカカオと、「ココア」と聞こえた人はココアと伝えたのでしょう。どっちも正解なので、どっちも流布したのかもしれません。この説が正しいかどうかわかりませんが、少なくとも私は非常に腑に落ちました。

 

あとは、村の学校を見学して子供たちと遊んだり、見晴らしの良い場所に案内してもらったり、スコールが降れば家でゴロゴロしたり、雨が上がればお店でビールを買って飲んだりしていました。

 

滞在期間の最後に、村人のおじさんが郊外の滝を見に連れて行ってくれました。滝は、かなりの高度のオーバーバンクの上から落ちていて、崖を住処にしている鳥たちが飛び交う風景と相俟って、とても見応えがありました。この滝まではジャングル内の遊歩道を歩くのですが、途中で樹上からカメレオンが降ってきました。そのカメレオン、よりによって、案内のおじさんの顔面を直撃しました。おじさん、びっくりして悲鳴を上げました。その悲鳴を上げたことの照れ隠しもあったのでしょう、カメレオンに激怒していました。まあ、ガーナ人も、カメレオンがいきなり顔面を直撃したら、そりゃあびっくりしますよね。

 

 

続く

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