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グァテマラよもやま話

グァテマラよもやま話 その14 狂犬病にドキドキ


2021.05.23グァテマラよもやま話


狂犬病という病気をご存じでしょうか。動物を媒介した感染症の一種で、発症したらほぼ100%死ぬ病気です。狂犬病に感染した動物の唾液中のウィルスが、ヒトの傷口から体内に侵入して感染します。感染源は犬が典型的ですが、犬以外でも、例えばコウモリが大量に生息している洞窟中に漂っているコウモリの唾液から感染するケースもあります。感染している犬は、やたらと狂暴だったり、ふらついてしていたり、様子がおかしいようです。

噛まれた場合の対応は、噛まれた直後から連続して複数のワクチンを接種して発症を抑えるのですが、なかなかスリリングです。なにしろ、発症したらアウトですので。

 

犬の噛み跡から滲む血を見た私の頭には、「狂犬病」「死」という文字が浮かびました。とにかくすぐワクチンを打たなければ、と思い、ただちに首都に戻り、事務所に駆け込んで状況を説明しました。

 

グァテマラの協力隊員は、アメーバ赤痢、マラリア、デング熱などなど、様々な病気にかかる者が多く、国別の協力隊の医療費の支出額は当時なんと世界一とのことでした。犬に噛まれる隊員も少なくなく、私が噛まれる少し前にも、別の隊員が噛まれて狂犬病ワクチンを接種したという話を聞いていました。それで、同様の対応を求めたところ、返ってきた言葉は・・・

 

「最近噛まれる隊員が多くて、ワクチンの在庫が少なくなってきてるんだよねー。えー、まあ、その犬、大丈夫そうだった?」

 

・・・・

 

「いや、冗談だけどね。」

 

もちろん、ワクチンはもらいましたよ。

 

ワクチンは頻度を開けて複数回接種します。医療機関には在庫はないので、事務所でもらって持ち込みで注射してもらいます。初回は、提携しているクリニックで接種しました。

グァテマラでは、注射を打つとき、注射器を親指と中指で保持し、やや勢いをつけてほぼ垂直に針を刺し込み、いったん停止した後、おもむろに人差し指でピストンを押し込む方法で打ちます。隊員はこれを「ダーツ打ち」と呼んでいました。

それ自体ユニークなのですが、提携クリニックの男性医師はさらにユニーク。とっても優しい性格で、注射を打つ場所をものすごく念入りに脱脂綿で擦ってアルコール消毒したうえで、こちらの目をじっと見つめて、「大丈夫。落ち着いて。痛くないからね。」と諭してくれます。この一連の所作が多少心を静めてくれるのですが、しょせんダーツ打ちなので、まあまあ痛いです。初回はこのダーツ打ちで決めました。

その後は、打つべきタイミング、医療機関が開いているタイミング、上京してワクチンを受け取ることができるタイミングを揃えることが難しく、結局全部違う人に打ってもらいました。打ち比べた結果、たまたま居合わせた看護師隊員に、日本式で打ってもらったときが、一番痛くなかったです。

 

さいわい発症することはなく、今も生きていられています。ほんと、よかった。

 

続く

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