グァテマラには、アメーバ赤痢以外にも、いろんな病気があります。
私が任地サラマに住み始めたころ、ちょうどコレラが流行していました。市内にひとつだけある入院施設を持つ病院は、コレラ患者で満室。普通の病気の人は診察できません、感染拡大防止のため決して生水は飲まないでください、という状態でした。大雨が続いていて、崖崩れも発生していました。いやはや、とんでもない所に来たものだ、2年間生き残れるかな、と不安に思ったのを覚えています。
今にして思えば、あれもひとつの医療崩壊なのでしょう。実際地元のみなさんがどうしていたのか、気になります。もっとも、コレラ患者が溢れかえっている病院になんて、仮に受診できますよと言われたところで、行く気にはなれませんよね。そもそも、サラマの病院のクオリティは、高いものとは思えないです(のちに自ら垣間見ることになります)。コレラが流行していなくても、時間をかけて首都の病院まで行っている人は多かったと思います。
グァテマラには、マラリア、デング熱といった、蚊によって媒介される感染症もあります。
バハベラパス県はマラリアやデング熱を媒介する蚊の生息地域ではありませんでしたが、低地の暑い地方にはこれらの蚊がいました。これらの蚊の生息地域にいる隊員には、マラリアやデング熱に罹る人もいました。いずれも高熱が出て、相当苦しいようです。あまり高熱が続くと精子が死ぬという話が伝えられていたため、ある男性隊員がデング熱に罹ったとき、キンキンに冷やしたビールで精巣の熱を取ったそうです。効果があったかはわかりません。
協力隊の派遣前の国内訓練では、破傷風やA型肝炎などのワクチンを接種します。たしか5種類ぐらいの病気のワクチン接種を受けたと思います。新型コロナウイルスのワクチン接種と同様、各2回打ちます。私はさらに、黄熱病のワクチン接種も受けました。当時の私の血液を輸血するとしたら、各種ワクチン込みなので、相当お得感があったと思います。
一方、マラリアなどの感染症には予防接種可能なワクチンは、少なくとも当時はありませんでした。そこで、隊員は、なるべく蚊に刺されないよう、常に虫よけスプレーを肌に噴射しまくったり、肌の露出を少なくするため長袖長ズボンを着たり、夜は蚊帳を吊って寝たりするわけです。
予防薬もあると聞いたことがありますが、ジャングルに分け入る予定があるとかなら別ですが、いつ蚊に刺されるかなんて、事前にわかるわけありません。だからと言って毎日予防薬を飲むのは、身体に悪そうだし、入手も難しいです。なので、薬での予防というのは、現実的ではありません。
ということで、低地の暑い地方の隊員は、苦労されたと思います。バハベラパス県などは、ダニなど、噛まれると非常に痒くなる虫たちはいましたが、高熱でうなされることはなかったので、その点は助かりました。
ところで、低地の暑い地方の地元民は、民族衣装はほぼなく、男性はTシャツにデニム、女性はノースリーブやタンクトップにデニム、という服装が多かったです。足はともかく、腕は刺され放題です。足元もサンダルなので、こちらも刺され放題です。だからと言って、地元民がしょっちゅうマラリアやデング熱になった、という話も聞きません。
全ての蚊が感染症を媒介するわけではないにしても、単に運というだけで片付けられません。ひょっとすると、地元民の好んで食べる物の中に、蚊の嫌がる成分が含まれていて、その成分が汗に混じって体外に出て、バリアのように体の回りを包んで、蚊を近寄らせないのかもしれません。あるいは、地元民がやたらと振りかける香水の中に、蚊の嫌がる成分が含まれているのかもしれません。
誰かわかる人がいたら、教えてください!
続く