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海外の旅

海外の旅の話 その17 マニラ上陸


2023.01.18海外の旅


グァテマラから帰国後、初めて出かけたのが、フィリピンです。

危険な匂いがする土地への耐性が付いた私は、普通の観光地では物足りない、世界を拡げたいと思い、観光地というイメージがなく、予備知識もあまりないフィリピンを、渡航先にしました。

 

エジプト航空を選んだせいでしょう。行きの飛行機の隣の席は、エジプト人女性でした。日本語で話しかけてくれます。聞くと、日本が好きで数年住んでいたが、親に呼ばれてエジプトに戻るところだ、エジプトに帰ったら結婚することになるだろう、そして二度と日本には戻れないだろう、とのこと。青春に終わりを告げる一粒の涙。彼女の幸福を祈りつつ、経由地のマニラで降機します。何かが起こりそうな予感を抱きつつ、マニラの街に足を踏み入れ、目指すは安宿の多いチャイナタウン。もちろん予約などしていません。夜10時を回っているので、人通りはあまり多くありませんが、とくに危険を感じません。ささっと宿を決めて、部屋で移動の疲れを癒します。

翌朝、さっそくマニラの街をうろつきます。バンコクと比べてあきらかに車が少なく、ぼろい建物も目立ちますが、雰囲気は全般的に穏やかです。自分がアジアに求めていた空気はこれだな、と感じます。公園で花売りのおばさんとおしゃべりしたり、市塲街で安っぽい日用雑貨を眺めたりしながら、アジアの空気を胸いっぱい吸い込みます。いるだけで心地よい。どうやら相性は良さそうです。

 

観光馬車の少年たちに声をかけられました。普段なら全然興味ないのですが、この時はなぜか乗ってみたくなり、お願いしました。ガイドの少年と、御者の少年のチームです。どこを案内されかは覚えていません。やがてツアーが終わろうとするころ、料金を提示されます。ここは日本か?と思うくらいの高額です。最初に値段を確認し忘れたのは私のミスですが、言い値を払う必要はありません。すかさず値段交渉に入ります。

グァテマラ感覚だと、言い値の10%程度から始め、30~40%程度で妥結すれば上々、50%だと払い過ぎです。私はきっぱりと、彼らの言い値の10%を提示しました。日本人からそんなハードな価格交渉を挑まれたことはないのでしょう、ガイドは驚いています。まあまあ値段を下げてきました。私は多少金額を上げますが、両者の開きは大きいままです。

ガイドの少年は、とりあえず行程を終わらせようと考えたのでしょう、御者の少年に「シゲ・レクト」と、そのまま進むよう指示します。しかし、フィリピンはスペインの植民地だった時代が長いせいか、タガログ語はスペイン語に似ています。彼らの交わすタガログ語のやり取りは、私にもある程度わかります。今シゲ・レクトって言ったよね、そのまま行けってことだよね、と指摘します。内緒話もできないことに、二人はさらに困ります。

私は、これが最後の提示だよ、ダメなら警察まで連れてって、と告げます。彼らはもはや、びびっています。これ以上下げるとボスに怒られる、と懇願された金額で、私は妥結しました。馬車は停まり、私は笑顔でお金を支払い、彼らに手を振ってお別れします。グァテマラだったら、こんなものでは済まないでしょう。ガイドはもっと激しい言葉遣いとジェスチャーで押してきて、最後は捨て台詞の一つも吐いたことでしょう。でもフィリピンはあくまでもソフト。好印象です。

 

適当に歩いていると、線路脇に小屋が立ち並んでいる一帯に辿り着きました。スラムなのでしょうが、グァテマラのスラムとは大違い。人はみな笑顔でフレンドリー。どこから来た、日本か、日本はいい国だ、などとあちこちから声をかけられます。コーラ買ったりお菓子買ったりして、お店の人やそこら辺の子どもたちとおしゃべり。いいものです。日本人の何とか言うバスケ選手が好きだ、お前はどうか、と聞かれます。フィリピンではバスケが人気のようですが、日本人バスケ選手まで知っているなんて、驚きです。

 

道々食べたフィリピン料理は、アジア料理っぽい感じですが、辛くはなく、クセもなく。では美味しくないかというと、そんなこともなく。積極的に嫌いになりようがない、と言えばいいのでしょうか。中には、ゴーヤチャンプルーそっくりの料理もありました。日本でも有名なサンミゲルビールを飲みます。多少しっかりめですが、飲みやすく、フィリピン料理によく合います。タイのように激辛を避けるために神経を遣う必要もありません。極めて平和に食事を楽しみました。

 

 

続く

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