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海外の旅

海外の旅の話 その28 おひねり


2023.08.25海外の旅


そうこうしているうちに、看護師さんと合流できたので、ブルキナファソ大使館について行きます。大体こういった国の大使館では、簡単な手続でもやたらと時間がかかるものです。彼女もそれで、何日かかかることを予測して、アクラで数日滞在することにしたわけです。しかし、この時ばかりは、あっさりとビザが発給されることになりました。ラッキー。

 

我々は市塲に散策しに行きました。市場は大好きなので、必ず行くようにしています。地元の食材がいろいろ売っています。日本にもあるような野菜でも、大きさや形が違うと、なんだか楽しくなります。でかいカタツムリも見かけました。フランス料理でもエスカルゴは食べますが、ここではなんとなく、あまり手を加えずに食べていそうです。試してみようとは思いませんが、どんな味・食感なのか、気にはなります。

 

そうやって市場をうろうろしていると、一人の酔っ払いのお兄さんに声をかけられました。建材屋かなにかの店員のようですが、あまり仕事をしている様子はありません。日本から来た、などと話していると、お兄さん気分が高まってきたのか、唐突に踊ってきます。ガーナって言ったら踊るんだよ、みたいな雰囲気です。ここは相手しないといけないなと思い、コール&レスポンス的に適当に踊ります。お兄さん、さらにテンションが上がってきます。やがて、あっちに行こうぜ、と無理やり我々を連れて行きます。

 

行った先は、市塲の外の広場。お揃いのコスチューム姿のお姉さんたちが、何かパフォーマンスをしています。酔っ払いのお兄さんは、構わず乱入して踊り出します。お姉さんたちは、なんだこいつ、みたいな冷ややかな目で彼を見ます。お兄さんは一切気にせず踊り続けます。しかも、お前も来い、としつこく呼びます。ぐずぐずしていると収拾がつかなくなるなと思い、仕方なく私も乱入します。すると、おいおい日本人が踊ってるよ、ということで、急に場が盛り上がります。

 

そのうち、一人のお姉さんが、私にお札を手渡ししてくれました。おひねりです。

 

私は、生まれて初めておひねりをもらったことに大変気を良くしました。そして手にしたお札をどうしたらいいか、考えました。日本ではこういう場合、着物だったら懐か袂に入れるのでしょうが、私はTシャツ姿です。でもズボンのポケットに畳んでしまうのは、何か芸がない感じです。

 

そこで私は、かぶっていたキャップと頭の隙間に、いただいたお札を挟み込みました。これが何故か大好評。さらに盛り上がります。すると、テレビクルーとおぼしき撮影隊が、私を接写してきます。大興奮のうちに、私のストリートダンスは終了しました。私を引っ張り込んだお兄さんは、いつの間にかどこかに消えていました。

 

その後、街の様子を見て、その日はガーナの独立記念日であることがわかりました。どうやら私は、独立記念日のイベントのひとつに紛れ込んだ模様です。あいにく、その日の夕方のテレビは見ませんでしたが、今日のひとこま、みたいなコーナーに、踊る謎の日本人として写っていたかもしれません。

 

夜もお祭りは続いています。我々は、屋台を食べ歩きします。独立記念日なだけあって、大変な人だかりです。皆さん本当にフレンドリーで、三線はなくても、踊っていなくても、日本人がそこにいるというだけで、いろいろ話しかけてくれます。しかし、街灯はあってもあまり明るくはありません。せっかく話しかけてくれる皆さんの顔が、夜の闇に溶け込んでいまひとつよく見えません。

 

看護師さんいわく、黒人の肌の色にも濃淡があって、サハラ砂漠に近づくほど(ニジェールとかマリとか)、一般的に肌は黒くなり、手足は長く、背は高くなるそうです。そう聞いてよく見ていると、たしかに、道行く人々も、本当に真っ黒な人もいれば、褐色と言った方が近い人もいます。体格もけっこう違っていて、2メートルぐらい背の高い人もいれば、私より小柄な人もいます。近くでお話ししていると、顔つきも様々であることがわかってきます。日本人も見た目は人によってだいぶ違いますので、当たり前のことではありますが、現地で感じると得心がいきました。

 

 

続く

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