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海外の旅

海外の旅の話 その47 一気


2025.11.20海外の旅


台湾には仕事で行くこともあり、その場合、地元の人たちと会食をすることが多いです。日本語が堪能な人が多いので、中国語がわからない私でも、コミュニケーションには困りません。

 

ですが、困ることもあります。台湾の人はおもてなし精神に溢れる方が多く、食べる方も飲む方も、十分堪能してもらおう、という気持ちを強く感じます。その結果、お酒を多く飲まなければならない状況に陥りがちです。

 

台湾では、ビールも普通に飲まれています。よく見るのが金牌台湾啤酒(ゴールド)。麦の香りがありつつ飲みやすい、中華料理によく合う味です。夏、蒸し暑い台湾の最適解です。

 

しかし、台湾の人のおもてなしを受ける場合、ビールだけというわけにはいきません。だいたい、途中で何らかの挨拶を求められるのですが、そのタイミングでいつの間にか用意されているのが、高粱酒。雑穀の一種であるコウリャンを原料とした蒸留酒です。これを、小ぶりのショットグラスに注ぎ、ストレートで乾杯します。

 

グラスが小さい分、一回で飲む量は少ないです。しかし、グラスに足がなく中身が入った状態で置くことができないため、都度一気飲みしてグラスを空にする必要があります。そして、乾杯は一回では済みません。しかも、高粱酒のアルコール度数は、低くても38度、高ければ50度以上あります。ということで、総合的に非常に攻撃力の高いおもてなしになります。

 

高粱酒の産地で有名なのは、金門島です。金門島は、中華人民共和国の厦門市の沖、わずか2~3㎞に位置しています。当然のことながら、対岸との軍事的緊張の最前線にあり、双方が砲口を向け合っています。面積は大小12個の島をあわせても150㎢、決して大きな島ではありません。このような島で産する高粱酒が、なぜ有名なのか、気になって調べたところ、金門島で食料を調達する必要があったが、金門島は降水量が少ないため、乾燥に強い高粱の栽培が奨励された、その高粱でお酒を造ったら美味しかった、ということのようです。高粱酒工場の建設時期は1952年だそうです。対岸との対立の副産物なのですね。

 

高粱酒による乾杯攻撃を受けると、かなりのダメージを受けるため、今のところ2次会にまで行かなかったことが多いです。仮にダメージが少なく、2次会まで行った場合、そこでまた高粱酒攻撃を受けるおそれがあるので、1次会での解散は悪い話ではありません。

 

でも、せっかく美味しい台湾料理をいただいているのに、高粱酒攻撃で途中から料理の味がよくわからなくなるのは、もったいない話です。それからすると、台湾の方々は、ガンガン飲むかたわら、食欲も旺盛です。しかも中華料理ですから、まあまあ油分は多いです。あれで二日酔いや胃もたれしないのでしょうか。謎です。

 

ちなみに、韓国の男性と飲む場合、彼らのなかには、爆弾酒といって、ビールのジョッキにウイスキーを注いだショットグラスを沈めて、混ぜて飲む、という作法を好む人がいます。今、抑えた書き方をしてみましたが、あくまでも私の経験では、爆弾酒が登場する確率は高かったです。しかも、向き合って相互に肘を組み、そのまま二人で一気する、ということになります。まあ、日本も昔は一気飲みが流行っていましたし、沖縄でも「おとーり」という、(口上を述べる+一気飲み)×参加人数×気が済むまで、みたいな風習があります。中国本土には行ったことがないのでわかりませんが、東アジアは一気飲みを好む風潮があるんですかね。ヨーロッパや中南米など他の地域で一気飲みを求められた経験がないので、不思議に思います。

 

続く

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