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グァテマラよもやま話

グァテマラよもやま話 その18 とんこつラーメン


2021.06.08グァテマラよもやま話


私は、お菓子も缶コーヒーもそんなに恋しくなかったですが、ラーメンだけは恋しく思っていました。赴任前、とくにラーメンを好んで食べていたわけではないのですが、グァテマラで暮らすうちに、なぜかラーメンへの想いだけが募っていきました。

もちろん、当時のグァテマラにはラーメン屋などありません。しかし、いつ届くかわからない、そもそも届くかどうかもわからない日本からの小包に、いかにも美味しそうな、簡単に転売先が見つかりそうな日本のインスタントラーメンやカップラーメンを入れてもらっても、手元に届く保証はありません。そのような試みは、私にはまったく無謀、無駄に思えました。

それでもラーメンが食べたい。そして私は、自分で作ることにしたのです。

 

もっとも、小麦粉を買ってきて麵を打つ、といった凝ったことはできません。インターネットのない時代、ラーメンの作り方を検索することはできません。隊員は各地に散らばっていますし、携帯電話も持っていませんので、作り方を知っていそうな隊員に聞くこともできません。そもそもラーメンを一から作るやり方など、誰か知っているとも思えません。

そして、私の試行錯誤が始まりました。

グァテマラでは、中華料理として、焼きそば(チャオミン)が出されることはありました。味はさっぱりですが、グァテマラで口にすることができる、パスタ以外のほぼ唯一の麺類は、このチャオミンでした。ということは、麺自体は調達可能です。

私はまず、中華食材店で、使えそうな乾麺を何種類か買いました。あれこれ試した結果、ベトナム料理用のやや太めの麺が、私の好みに合いました。今思うと、一体誰をターゲットにした麺なのか謎ですが、好みに合う麺を入手できたのはラッキーでした。

次はスープです。

まず、鶏ガラを試しました。鶏自体はどこでも買えるのですが、だし用の鶏ガラは売っていません。そこで鶏を丸々買うことになりますが、だしを取るとなると、かなりの量が必要です。かなりの量を買うと、肉が余ってしまいます。肉ごと煮込めばいいのでしょうが、貧乏な私にはもったいない行為です。一応はトライしたものの、鶏ガラは諦めました。

魚介系のだしは材料の入手が困難なので、次の候補は豚骨ということになりますが、グァテマラには豚骨からスープを取る食文化がなく、豚骨自体見つかりません。ここで行き詰まりました。

しかし、具材用に中華食材店で買った豚肉の醤油煮の煮汁をお湯で割ったところ、いい感じで豚骨っぽい味になることを、偶然発見しました。そして、同じく中華食材店で買った海苔、搾菜をトッピングすると、見た目さらにラーメンに寄ってきて、それらしい味に感じてきました。さらに、搾菜のたれを少し混ぜたり、本だしを少々加えたり、ニンニクをスライスして油で炒めて加えると、イメージしていた味に近づいていきました。

このあたりから、他の隊員に試食してもらって意見を募り、味や麺の茹で加減の調整を重ねていきました。最終的には、我ながら納得のいくレベルの麺が完成しました。私はこれを、とんこつラーメンと称していました。スープにしても麺にしても、本来のとんこつラーメンではないのですが、「とんこつラーメンを食べることができる」と思えることが、私の心を満たしてくれました。「食」って重要ですね。

 

続く

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