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グァテマラよもやま話

グァテマラよもやま話 その20 コーヒー


2021.06.21グァテマラよもやま話


コーヒーの実を実際に見たことありますか?

大きさはサクランボぐらい、色は赤で、朱色がかったサクランボよりは赤みが強い感じです。英語ではコーヒーチェリーと呼ぶようです。

実の表面には、薄く果肉がついています。果肉は、酸味もありますが、甘味が強くて、かなり美味しいです。ただ、果肉は少ししかないので、フルーツとして売り物になるものではありません。

 

コーヒーの原料は中の種の部分で、英語ではコーヒービーンと言います。商品として売るためには、種を取り出す必要があります。私の地方では、収穫した実を筵に並べて天日干しにして、果肉を腐らせて柔らかくした後、水で果肉を洗い流して、種を取り出していました。コーヒーの果肉が腐ると、ギンナンみたいな匂いがします。かなり臭いので、コーヒーを天日干しにしているそばを通るときは、息を止めていました。

 

コーヒーは、大抵は大農園で栽培します。コーヒーの大農園は、私の住んでいたバハベラパス県より500メートルほど高地の、標高1500メートル近辺の地方に多くあります。一日の気温の寒暖差がかなり大きくなることが、コーヒーの生育に良いのでしょう。

コーヒーの収穫期は12月から3月にかけてですが、この時期には大農園には多くの季節労働者が必要になります。季節労働者は、外国からの不法移民もいますが、国内の農村地帯からの出稼ぎが多いです。

コーヒーの木は、原種ではどれぐらいの樹高になるかわかりませんが、栽培されている品種では、地上2メートルもないぐらいで、低いです。実は手で摘み取ります。高い枝の実は大人が、低い枝の実は子どもが摘み取ります。手当は歩合制で、背負い籠一杯でいくら、という感じです。当然、朝から晩まで働きどおしです。

3歳ぐらいの子どもでも、一番低い枝の実を摘みやすいので、戦力になります。なので、出稼ぎには、大人だけではなく、子どもも行きます。要するに、一家全員で出稼ぎです。

 

出稼ぎの期間にも、学校の授業はあるのですが、村のほとんどの家族が出稼ぎに行くので、学校は開店休業状態です。このように、出稼ぎによる欠席が多いことから、授業についていけない子どもが多く、中学校まで進学しなかったり、小学校を中退したりすることになります。この点はおおいに問題視されていて、就学率を上げるため、日本を含め各国が援助金を投入して、学校建設を進めたり、学用品を購入・配布したり、教員を養成したりしていました。しかし、村に学校が出来ても、ノートや鉛筆がもらえても、教員が配置されても、だからといって子どもたちがみんな学校に通うか、というと、そうでもないわけです。

 

一度、仲良くしている村人家族の出稼ぎ先を訪ねたことがあります。彼らが寝泊まりしている小屋は、壁と天井を板で囲ってはいるものの、床は地べたに筵を敷いただけでした。夜寝る時、ものすごく冷えるはずです。バハベラパス県の村でも、みなさん、粗末とはいえ、ベッドにマットレスを敷いて寝ていましたから、あれは相当きつく、熟睡などできないはずですが、文句を言ってもどうなるものでもありません。

 

ちなみに、綿花の大農園を訪問したこともあります。綿花は高温多湿な地方で栽培されるので、環境はコーヒー農園とは全然違いますが、季節労働者たちは、奥の壁だけある棚に、雑魚寝のような形で住んでいました。棚は2段重ね、高さは約1.5メートルでした。夜中は寒くはないでしょうが、いくらなんでもひどいな、と思いました。

綿花の大農園は、当たり前ですが私有地です。普通には入れませんので、このときは薬の行商の人にくっついて、助手の体で潜入しました。見渡す限りひとつの大農園の敷地で、機関銃で武装した警備員がうろうろしています。協力隊員、つまり日本政府関係の公的な人間であることがバレると何をされるかわからないな、などと思い、スペイン語がよくわからない中国系労働者の振りをしていました。かなり緊張しました。それよりも、季節労働者が脱走を図ったりして捕まっても、あるいは単に警備員の気に入らないことがあったとしても、何をされてもわからないな、と思うと、ぞっとしました。

 

今日も仕事をしながらコーヒーを3杯飲みましたが、このコラムを書くまで、上に書いたことなど一切頭に浮かびませんでした。しかし、こうやって思い出した以上、途上国でコーヒーがどのように生産されているのか想いを馳せて、有難くいただきたいです。

 

続く

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