韓国料理も好きで、よく上野や新大久保の韓国料理屋に行っていました。焼肉ももちろん嫌いではありませんが、コムタン、ソルロンタン、ポシンタンなどのスープ物をよく食べていました。最初に10皿ぐらい出てくるお惣菜を食べると、スープ物に白飯でお腹いっぱいになり、焼肉まで辿り着けません。韓国物産店でキムチやサムゲタンを買って家で食べたりもしていました。
ある日、行きつけの韓国物産店で、そう言えば韓国に行ったことがあるか、という話になりました。ないです、と答えると、ぜひ行ってみて、親戚に案内させるよ、とのこと。そう言われると、行くしかないですね。食べ物が美味しいことはわかっているので、楽しめること確実です。
仁川空港からソウル市街に到着したのは、夜10時を回ったころ。11月に入っていたので、かなり冷え込んでいます。さっそく宿を探すと、運よくオンドル付きの安宿を発見。おばちゃんが日本語をしゃべれず、英語もよくわからないのですが、どうにかして部屋の確保に成功します。
お腹が空いていたので、すぐさま街へ。道端の屋台で、見た目日本風のおでんが売られています。夜の冷え込みのなか、非常に魅力的に映ります。韓国に着いて最初がおでん?という思いもありましたが、かまわずいくつか注文します。このおでん、実際に日本風で、薄味ながらだしが効いていて、ものすごく美味しかったです。滑り出し順調。
翌日は、観光でお昼まで時間を潰し、烏骨鶏を使ったサムゲタンが名物のお店に入ります。貴重な烏骨鶏を使う分、さすがにお高め。しかしせっかくソウルに来たのですから、食べない手はありません。来ました。烏=カラスの名のとおり、たしかに身や皮が黒っぽいです。私の舌には、普通の鶏肉との違いがいまひとつ感じ取れませんが、美味しいことには変わりありません。満足。
韓国語を少しだけ独学したことがあり、ハングルは読めたし、最低限の会話はできました。なので、地下鉄や街路の行先表示を解読して、駅員さんや運転手さんに行先を確認すれば、目的地にたどり着くことができました。それはそれで嬉しかったのですが、道で地図を見ながらきょろきょろしていると、けっこう地元の人に話しかけてもらえて、簡単なやり取りをすることもでき、さらに嬉しかったです。なかには親切に日本語で説明してくれる人もいました。皆さんいい人です。
慣れるにしたがい、ローカル色の強い食堂に入っていきました。韓国語しか通じませんが、そこがまたいいわけです。血のソーセージといった癖のあるものを食べ、地元のお酒を飲んだりして過ごしました。ファジャンシルと書かれた看板を読んでトイレの場所を確認できたことは、非常に有益でした。
韓国物産店の人から聞いた親戚の子に連絡を取り、待ち合わせ場所のショッピングモールに行くと、現れたのは20代のОLさん。叔母さんに命じられて休日を潰して見知らぬ日本人の相手をしに出てきていただいたわけです。ショッピングモールだったのは幸いでした。レストラン街で、パスタか何か、女性の好みそうな、韓国料理でないものをご馳走しつつ、たどたどしい日本語で何とか会話します。しかし、初対面の私たちには共通の話題もなく、話は弾みません。気まずい私は、映画を観ることにしました。やっていたのはムーランルージュ。ソウルで韓国語字幕付きの英語の映画を観ることになるとは、思ってもいませんでした。ニコール・キッドマンを見るたびに、この日のことを思い出します。
ソウル郊外の民俗村では、昔の韓国の建物が保存されており、キャストは民族衣装を着ています。そういうのが好きな私は、さらに農楽という伝統芸能をやっているのを発見しました。農楽は、豊作祈願や収穫祝いなどの農民の踊りです。白い衣装に赤・青・黄といった原色の飾りを付けた踊り手が、沖縄のエイサーのように太鼓などの打楽器を手に持って叩きながら踊ります。フォーメーションとしては、円弧を描いて走り回るのですが、ゆっくり始まってだんだん早くなり、またゆっくりに戻ったり早くなったり、というリズムのゆらぎがあり、引き込まれます。演奏しながら輪になって駆け回って踊るわけですから、相当激しいです。見るからに大変そうですが、目にも耳にも迫る力があり、素晴らしいものでした。未体験の方には、ぜひ観ていただきたいです。
ソウルに戻って、ナンタを観ました。ナンタは、ほとんどセリフのないミュージカルで、料理人に扮するアクターたちが、包丁やまな板などを楽器として、激しいリズムを刻み続けます。かなりの迫力です。韓国の人は体力があります。
古典も大事なので、宮廷舞踊のステージも観ました。終了後、ダンサーたちとの写真撮影が可能とのこと。その場にいた日本人旅行者にカメラを託し、喜んで写真を撮影していると、どこからか私の名前を呼ぶ声が。振り向くと、なんと幼馴染の在日韓国人の姉妹が、驚いた顔でこちらを見ています。ソウル留学中の妹を、姉夫婦が訪ねてきているところでした。私も驚きましたが、撮影をお願いした彼女はさらに驚いています。そのまま彼女も一緒にみんなでプルコギ(焼肉)を食べに行きました。韓国で唯一食べたプルコギです。大ぶりな肉を焼いて、ハサミで切って食べます。もちろん満足。
食後は南大門市塲を散策。姉の旦那さんが露店で何かおやつを買おうとして、売り子と口論になっています。売り子がぼってきて、旦那さんは言葉がわかるので文句を言ったら、在日韓国人だと知った売り子が馬鹿にしたようなことを言い返してきたそうです。在日韓国人が韓国に行くと、韓国語も満足にしゃべれない、辛い物も食べられない、などといってイーブンに扱われないことがあるそうです。いや、少なくとも幼馴染の家では普通にキムチ漬けていましたし(匂いを今でも覚えています)、子どもの私には出されなかったのでわかりませんが、見た感じ辛そうな物食べていましたよ。けれど、そんな彼らにとっても、韓国で出される韓国料理は実際辛いみたいです。しかし、そんなことどうでもいいじゃないですか。日本人にだって味噌汁嫌いな人いるし。妹も、ソウルに住んでみて、自分には韓国人は合わないみたい、と思うようになったそうです。難しいものですね。。
そんなアクシデントはありましたが、1週間足らずの割に盛り沢山な良い旅でした。
続く